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まさと先生の診察日記Messages from Dr.Masato

できもの’は肉眼で判断できる? 手術前の細胞診の有用性・必要性

副院長 佐久間まさと
2014/12/01

だいぶ長らく腫瘍の話をサボっていました、久々にアップします汗
朝方、夜かなり冷え込んできましたね、皆様風邪などひかれてないでしょうか?
今回の腫瘍の話は「‘できもの’は肉眼で判断できる?手術前の細胞診の有用性、必要性」と題してお話ししたいと思います。

前回の腫瘍の話では‘できもの’は炎症性のものや過形成性もあるし良性腫瘍、癌、肉腫と様々でその言葉によって動き方、広がり方、治療法、予後が違うという話をしました。 そこで今回は、体表、体腔内にできた‘できもの’に対する始めのアプローチの方法である細胞診についてできるだけわかりやすく説明したいと思います。

まず細胞診の定義として「組織あるいは病変の構成細胞の一部を吸引、擦過、洗浄などの方法で採取し、組織あるいは病変の状態を個々の細胞形態から判断する」こととなっています。

細胞診とは、ようは‘できもの’や溜まっている液(腹水、胸水、嚢胞など)の一部を細い針を刺して一部をとってきたり(FNA検査)、直接スライドグラスを押し当てたり(スタンプ検査)、溜まっている液体を吸引して、その材料で塗抹を作成し染色して顕微鏡で観察して、‘できもの’の正体を探る方法です。また超音波を見ながらお腹の中の‘できもの’に対してもFNA検査することも可能です。

下の表1のようにまずは腫瘍性病変なのか、非腫瘍性病変なのかを判断していきます。 この腫瘍なのかそうではないのかの判断が一番重要だったりします。
そして腫瘍性病変なのか非腫瘍性病変なのかの判断がついたら、その由来や判断できる範囲で悪性度、また炎症の質、感染を伴っているのか否か、また沈着物質の種類を探っていきます。ただ、腫瘍の悪性度の判定までは難しく、あくまで仮の診断に留めていた方が無難です。

〈腫瘍性病変〉  〈非腫瘍性病変〉   
◎腫瘍の由来  ◎炎症の質  ◎沈着物質(細胞内外)
上皮系腫瘍  感染症  角化物 
 非上皮系腫瘍(間葉系腫瘍)   細菌   グリコーゲン
独立円形細胞  真菌  脂肪  
    寄生虫(原虫 石灰
    ウイルス(封入体)  アミロイド など
  非感染性   
    免疫介在性(アレルギー)  
  表1



‘できもの’=敵の正体がある程度把握できれば、それからは治療方針の選択へと続きます。(治療方針の決定については次回以降に)

ここで最近来られた症例で細胞診が有用だった症例を簡単に紹介します。

その子はまだそんなに年でもない猫ちゃんで数か月前からくしゃみ、鼻水の治療を他院でしているものの、あまり良くならないとのことで当院に来院されました。
初めてその子の顔をみたとき、なんとなく鼻の上が腫れているなと感じました。 また鼻の穴の中をよく似てみるとお肉みたいなのがピロッと覗いてました汗。
そこで、そのお肉の部分を綿棒で拭って、細胞診の検査を行ったところ図1に示すような細胞が取れてきました。この細胞は特徴的な細胞でかつ細胞診で診断が可能な悪性腫瘍でした(鼻腔内リンパ腫)。

図1

この子はその後、大学病院でのCT検査で腫瘍が目の下まで広がっていることが判明しましたが、現在リンパ腫の多剤併用化学療法であるUW-25プロトコールを開始して、現在のところくしゃみも鼻水もなく占拠していた腫瘍も見た目上消失して副作用もほとんどなく元気に通院されています。(抗癌剤の治療についても次回以降に紹介します)。
この症例は初診のときに細胞診の検査をしていなかったら、症状も長引いていたでしょうし、見当違いの治療をもしかしたらやっていたかもしれません。

また別のワンちゃんの症例で、数か月前から下痢、嘔吐が続き、また陰嚢の周辺がはれているという子がいました(図2)。

図2

この子はまず近くの病院を受診され、下痢嘔吐の治療をするも改善せず、また別の病院に行き入院して点滴をするもあまり改善せず、そこで大学病院へと行かれました。そこで細胞診の検査をうけたところ陰嚢の肥満細胞腫ということが判明し、また全身に転移もしており状態も非常に悪くなっていました。その時点で大学病院から依頼を受けて当院に来られました。初診時はぐったりしてあまり歩くこともできず下痢、嘔吐も続いており、いつ亡くなってもおかしくない状況でしたが、抗癌剤、また分子標的薬での治療をおこなったところ、症状も改善し元気食欲もでて元気にお散歩できるまで回復してくれました。この子は残念ながら治療開始してから4か月後に腫瘍の再発でなくなりましたが、亡くなる3日前まで症状もほとんどなく、痛みのコントロールもできており飼い主様の腕の中で安らかに送ってあげることができました。

この症例の場合も一番初めの病院で細胞診の検査をしていたら、もっと早くに治療に入れていたかもしれませんし、もしかしたらその時点で転移がなかった場合手術で完治していたかもしれないことを思うと悔やまれる症例です。

このように‘できもの’を発見したら、まずは敵の正体を知るために可能であれば細胞診をすることが非常に重要です。その検査の結果、手術して取った方がよいのか、とりあえず様子見でもよいのかという判断材料にもなります。またある程度腫瘍の正体がわかれば手術時の取り方も変わってきます。

今回は細胞診の有用性、必要性と題してお話ししました。僕は「‘できもの’ができました!」と来院された飼い主様には慌てずにまずは敵を知りましょうといつもお話ししています。切れば治るものもありますがそれだけではなく切る必要がないもの、切ってもあまり意味がないものもあります。まずは敵を知ることから始めましょう!!

※細胞診はなんでもわかる万能の検査ではありません、わからない場合もありますし判定が難しい場合もあります。またお腹の中の腫瘍に関してはFNA検査をしないほうが良いものもあります。

ことばの話 できもの=腫瘍?=癌?

副院長 佐久間まさと
2014/04/01

こんにちは、副院長のまさとです。
だいぶ暖かくなってきましたね。 このまま何事もなく、春になってくれれば良いのですが。

今回の腫瘍の話は、少し硬い内容で腫瘍のことばの話をしたいと思います。
よく、転院や紹介された症例の中で、飼い主さまが「この子は昔、小さい癌ができて手術しました。」というお話を聞くことがあります。
そこで私は、いつも「そのときの病理検査の結果はどうでしたか?」と尋ねるのですが、実際覚えていらっしゃらないというか、実施していない場合も多いように感じます。
診断の話は次回以降したいと思うのですが、できもの=癌、すぐに切らないといけない!と考えられている飼い主様が少なからずいらっしゃいます。(もちろん、切除したほうが良い場合のほうが多いのですが。)
実際切除した‘できもの’が何だったのかは非常に大事で、その後の対処法、予後(再発、転移のしやすさや寿命)に関わってくる大事な情報です。
まず腫瘍、癌というものは何もないところから生まれてくるものではありません。どんな腫瘍でも生まれた場所や起源、由来があります。(人種や出生地みたいなものですね。)

ここで本題のことばの話ですが、癌(がん)というものは、皮膚の表面を作る細胞や臓器の表面を作る細胞(上皮系由来細胞)の異常な増殖によってできた‘できもの’で、さらにその‘できもの’を作っている腫瘍細胞がすごい速度で分裂していたり、元の細胞の特徴をほとんど失っていたり(より若い細胞の特徴を持ってたり)など、腫瘍細胞が顕微鏡的に悪性の顔をしているもの、動きをするものを癌といいます。
逆に良性の顔をしているものはことばとして、〜腫という名前になります。(例:乳腺腫(良性)、乳腺癌(悪性))

また同じ‘できもの’でも、上皮系細胞由来ではない筋肉や骨、神経を作っている細胞(間葉系由来細胞)の異常な増殖によりできた腫瘍で悪性のものは〜肉腫という名前になります。(例:血管腫(良性)、血管肉腫(悪性))
ただ、上皮系でも間葉系でもない細胞(独立細胞;細胞一つだけで機能できる細胞)である赤血球や白血球(主にリンパ球)や肥満細胞などは、基本的に血管の中やリンパ管の中、上皮の至るところに元々あるため、ことばとしては基本的に良性、悪性の区別をしません。(例:リンパ腫、腫瘍化したということはすでに全身転移しているようなものなので)。
また一見、できもの、しこりのように見えても慢性的な炎症による組織の肥厚や肉芽腫(腫とついていますが腫瘍ではありません)、嚢胞(袋のような構造で腫れている場合)などもありますので、できもの=腫瘍=癌ではありません。

こんな感じで腫瘍のことばって非常に難しいですよね・・・。
しかし、これらのことばはただの言葉のようですが非常に大事で、前述したようにこれらの名前の違いによって、そのできものの再発率、転移率、転移しやすい場所その動物の寿命まで左右するものなのです。
今回は頭がごちゃごちゃなるような硬い内容でしたが、皆さん読んで頂けたでしょうか?
動物にできもの、しこりができたときまずはあわてることなく、まずはご相談下さい。
もし以前腫瘍の手術をして病理検査の結果をお持ちでしたら、見返してみても良いかもしれませんね。

次回は腫瘍の手術前の細胞診検査の必要性、有用性についてお話したいと思います。 長文で読みにくい内容でしたが、読んで頂いた皆様ありがとうございました。

※今回の話、図表はあくまで基本原則であって例外も多数あります。

※写真は腫瘍とはまったく関係ございません。
二人で日向ぼっこをするぷー太郎とりんちゃん、ただの猫自慢です笑


腫瘍の話

副院長 佐久間まさと
2014/03/01

今回から、腫瘍の話と題して定期的に動物の腫瘍についてお話していきたいと思います。一概に腫瘍と言っても多様なトピックがあります。ここではできるだけわかりやすく経験も踏まえながら、最新の情報等も発信していきます。
まだまだ私自身も勉強中ですので、このページを通して皆さんと一緒に成長していけたらなと思います。

第一回目なので気合いれて長文です。(笑)
次回からトピックごとに腫瘍の話を基礎的なところからお話ししたいと思っています。
第一回目は最近診察して印象的だった症例について紹介したいと思います。初回なので、わからない用語も出てくると思いますが、ご了承くださいませ。

その子は私が熊本に帰ってきて初めてリンパ腫として診療にあたったワンちゃんでした。 元々他院で、皮膚病の治療をされていて、始めは院長の専門皮膚科を受診し、調子が悪いとのことで、私のところに紹介されてきました。ただ、その時はワンニャンドックの結果、脾臓に腫瘍が見つかり、脾臓摘出をすることで完治し、その後数か月は皮膚の調子も良く薬浴を続けていました。ある日、飼い主様が「元気だったり食欲はあるんだけど、何か首回りが腫れてきたのよねぇ」とのことで、腫瘍科を再受診されました。診ると確かに首回りが腫れています。また、腫れているのは首回りだけでなく、下顎、浅頚、腋下、鼠径、膝窩リンパ節で外から触れる体表リンパ節全てが腫れていました。ここで、リンパ節の細胞診検査をしたところ、リンパ腫の疑いあり。後日、パンチ生検による病理検査をすると、B細胞性低〜中分化型リンパ腫との診断でした。臨床診断としては多中心型リンパ腫(B細胞性)ステージVaと、リンパ腫の中では比較的多いタイプでした。まだ諦めるような癌ではなく、対症療法だけでは始めのうちはよかったとしても長くて1か月というシビアな話をさせていただき、いろいろな抗がん剤を組み合わせて治療していく多剤併用化学療法を提案いたしました。飼い主様は、始めは動物に抗がん剤なんて!とビックリした様子でしたが、リンパ腫は他の悪性腫瘍と違って抗がん剤がよく効くことも多く、人のように副作用がシビアにでることも少なく、普通に生活して元気でいられる時間を延ばすことができますという話をさせていただいた結果、多剤併用化学療法にて治療していくことになりました。
(ここまで出てきた細胞診、パンチ生検や腫瘍のタイプやステージ、多剤併用化学療法などの用語については次回以降、順をおって説明していきたいと思います。)

ここまででしたら、比較的よくある症例なのですが、この子は、抗がん剤と一緒に使用する多剤併用療法には必須であるステロイド剤(プレドニゾロン:よく痒み止め、抗炎症剤として出されるお薬)に強いアレルギーを示した経歴を持つ子でした(錠剤も注射も)

実際、海外の文献を探してもそういう症例の報告はありませんし、恩師である大学の腫瘍の先生に聞いても経験がないという始末で、さてどうしたものかとあれこれ考えました。こういう症例に抗がん剤を使ったら、副作用が強く出すぎるのでないか?最悪それによって寿命を縮めてしまうのではないか?ただ、リンパ腫はまったなしに大きくなり、症状も出始めてしまっていました。ここで、同じステロイド剤でも種類のちがう薬剤を代替薬として新しい治療プロトコールを作成し、治療してみることにしました。最初にその薬剤を投与したときはごく低用量からでしたが、かなりドキドキで、点滴の準備もしての投与でした。本当に幸運にも薬剤に対するアレルギー反応が起きず、経過を追っても他の抗がん剤に対するアレルギーも副作用も起きませんでした。始めは本当に安堵しましたが、リンパ腫が完治したわけではありませんので、その後も試行錯誤しながら、治療を進めました。 大変残念なことについ先日、診断から9か月後にリンパ腫の全身転移により、その生涯を終えましたが、最後まで苦しそうな様子もなく眠るように飼い主様の腕の中で亡くなりました。飼い主様も悲しいながらもゆっくり死について考える時間もでき、8か月間は健康な子となんら変わらない生活を送れたのですごく感謝していただけました。もし抗がん剤での治療をしなければ苦しみながら数週間〜1か月の命だったことを考えると、僕は多剤併用化学療法をやってよかったと思っています。
(この子に関しては獣医学術九州地区学会にて学会発表を行いました。)

私はどんなに難しい症例、さじを投げたくなる症例でも、少しでも生活の質を保ちながら、長く生きられる可能性のある治療法が存在するのであれば、飼い主様には提案していきたいと思っています(もちろん選ばれるのは飼い主様で、他の治療法も提案します)。しかしそのためには確固たる知識が必要なので、日々アンテナを高くもち、最新の情報を勉強し、その情報をできるだけ早く飼い主様のもとへ届けたいと思います。

第一回目は長文になりましたが、ここまで読んでくださった皆様には感謝いたします。
次回からは、いろんな腫瘍について基本的なことから、わかりやすく説明していきたいと思いますので、よろしくお願いします!
また、当院では他院で治療中の子でもお話のみのセカンドオピニオンを受け付けていますので、お気軽にご相談ください。



Jonan Sakuma Animal Hospital城南さくま動物病院

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