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ゆうみ先生の皮膚科診療Dermatology by Dr. Yuumi

     

かゆみとステロイド Ⅱ

2014年10月

清々しい秋晴れ、気持が良いですね。朝夕は涼しく、日中の気温も落ち着いてきてこの時期になって痒みがおさまるワンちゃんがいるかと思えば、必ずこの時期に来院して又今年も痒くなりましたと顔を曇らせていらっしゃるオーナーさんがいます。この時期に飛散する花粉には、アシ、ブタクサ、セージ、アキノキリンソウ、シロザ、などがあります。

さて、転院症例のワンちゃんで、「痒み止めの注射をずっと打ってきた。最初は1ヶ月に一回ぐらいに打つと良く効いていたけどだんだん効かなくなって痒みも止まらず元気もなくなってきたみたいで・・・」というお話をよくお聞きします。

そこで今回はかゆみ止めとして長時間作用型のステロイド剤であるケナコルトで治療されてきたワンちゃんについてお話しましょう。

このワンちゃんは9歳の女の子(未避妊)で、湿疹ができて痒みも出てきたため、他院でケナコルトの注射に加えて抗生剤、経口のステロイド剤であるプレドニゾロン、抗ヒスタミン剤で治療されていました。はじめのうちはかゆみは治まっていたみたいですがだんだん痩せて元気がなくなり顔色も悪く、お腹だけぽこっと膨れて、皮膚は薄くなり、毛は少なく、すごいかゆみでかきむしって血だらけ・・・という悲惨な状態でした。



*初診時の血液検査結果 

GLu 103 mg/dl  WBC 140×10² /μL
T-Cho  213 mg/dl RBC 491×10⁴ /μL
BUN 18 mg/dl   HGB 11.0 g/dl
T-Bil under 0.2 mg/dl  HCT 32.8 %
GOT PLT 89.4 ×10⁴ /μL
GPT 519 IU/L    
ALP 3884 IU/L    
Cre 0.4 mg/dl    
TP  7.0 g/dl    
 ステロイド剤の長期投与が原因と思われる肝酵素の上昇(GPT, ALPの高値)が認められました。
まず、皮膚の検査で、皮膚の中に寄生するダニの一種の犬毛包虫(通称ーアカラス)が多量に確認できました。この毛包虫はステロイド剤の副作用で弱った皮膚が大好きなので、ステロイド剤の投与を中止し、まずは皮膚を清潔に保ち犬毛包虫にダメージを与えるために薬浴(シャンプー療法)を開始し、毛包虫症の治療、2次感染の治療として抗生剤による治療を行いました。3週間後にはずいぶんと皮膚の状態が良くなり顔色も良くなって、お腹も少しすっきりしてかゆみも少なくなってきたので、性ホルモンによる皮膚の状態悪化を防止するため子宮卵巣摘出術を実施しました。

*治療開始3週間後の血液検査結果
 
GLu 93 mg/dl  WBC 122×10² /μL
T-Cho  194 mg/dl RBC 582×10⁴ /μL
BUN 15 mg/dl   HGB 12.6 g/dl
T-Bil 0.2 mg/dl  HCT 38.4 %
GOT under 10 IU/L  PLT 72.8 ×10⁴ /μL
GPT 173 IU/L    
ALP 1394 IU/L    
Cre 0.6 mg/dl    
TP 6.6 g/dl    

ステロイド剤の中止の結果、初診時に高かった肝酵素の値も徐々に正常値に近づいてきています。

その後、約2ヶ月間治療を継続して全薬剤の投薬を中止しました。現在のところ、毛は綺麗に生え揃い痒みもなく良好な経過を維持できています。


このようにまず痒みを止めるのではなく、その原因を突き止めるために皮膚の詳しい検査をすることがとても大事だと思います。そして子宮卵巣摘出術をしていない子は必ず手術をお勧めします。それは高齢になってからの性ホルモンのアンバランスは皮膚に大きな悪い影響を与えるからです。実際、高齢で皮膚病がある子の手術時に卵巣や子宮を観察しますと肉眼的にも異常が見つかる事がとても多いのです。
又、皮膚の痒み、アレルギーの原因となるノミダニの予防も忘れてはいけません。

このように痒みのあるワンちゃんを治療するときは単に痒みを止める事に主眼をおかず、その原因を突き止める事がとても重要です。

いつも言いますがステロイド剤は病気によっては最も重要な薬剤です。高容量を使わないといけない皮膚病もあります。しかし(痒み=ステロイド使用)だけの選択では副作用で寿命を縮めるような恐ろしいことにもなりかねないのです。

「痒みの原因を突き止める!」・・・これが第一です!



     

かゆみとステロイド

2014年07月

最近、中小企業家同友会という中小企業の経営者の勉強会に入会しました。
一獣医師として皮膚科診療の腕を磨き続けるのはもちろんですが、さらに、小さいながらも一企業家として”経営”を学びたいと思ったからです。

先日その会の新入会員歓迎会があり、多くの異業種の経営者の方々と知り合い、意見交換することができました。大変有意義な時間となり、今回特に心に残ったのが「いくら私がスタッフにニコニコ笑顔で対応しなさいと号令をかけても本当にその人が人として幸せでなければ心からの笑顔での対応はできない」というお話を聞きました。考えてみれば当然のことなのですが改めて考えさせられました・・・

目先だけの、形だけの対応には限界があります。表面だけ取り繕っても根本的な解決を目指さなくては本当の解決にはならないのです。


話はぴょんと飛んで(飛びすぎかな?)皮膚病も同じ事が言えます。
皮膚が痒い・・・だから原因の追求もせずにまず「かゆみ止め≒ステロイド」で痒みを取る。で、また痒くなったらステロイドを使う。どうかすると長期間作用するステロイドの注射を打つ!信じられませんがそういう治療を受けていたワンちゃん達がよく来院します。

「最初は痒みが止まっていたのですが、だんだん効かなくなって・・・」
ワンちゃんはというと下の画像のような状態になってくることがあります。皮膚は薄くなり炎症を起こしたり、苔むしたような分厚い皮膚になって(苔癬化)毛は抜け落ちてお腹はビール樽のようにパンパン、ひどい子になると、多飲多尿多食、でよたよた・・・という状態です。

痒みの原因は?とお聞きするとほとんどが「アトピー」とか「アレルギー」と言われましたという答えが返ってきます。う~~ん!確かにアトピーもアレルギーも痒い。しかし痒い“原因”はそのほかにもざっと、ノミ、ダニ、毛包虫(デモデックス)、カイセンなどの外部寄生虫、細菌感染、マラセチアなどの真菌感染などがあります。

アトピーとか、アレルギーとか言う前にそれらの他の病気でないという事をきっちり確かめなければいけません。(これを除外診断といいます) 一つ一つの原因を除外(消して行く)して最後に到達するのが、アレルギーやアトピーという事になります。除外診断もせずにとにかく痒みを止めるために「ステロイド!」というのはむちゃくちゃです。ステロイドを使いすぎたために毛包虫(デモデックス)がのさばりいよいよ痒みが強くなり全身血だらけ・・ なんていう事態が起こります。

私は「ステロイド」が悪いと言っているのではありません。ステロイドは安くて切れがよくて使いようによっては素晴らしいお薬です。私ももちろん使っている症例はあります。ただ、痒みを止めるための選択枝がステロイドだけというのはダメだと言っているのです。ステロイドを処方する前にきっちりしておかないといけない診断があるのです。

これから不定期にはなるかと思われますが、実際の症例を通してして、どんな症例でどんな診断を下しどんなふうに痒みを克服していったかをご紹介してみたいと思っております。


花の還暦

2012年06月


5月23日に誕生日を迎え60歳、還暦です。

亡き夫(前院長)の誕生日も5月18日でした。子供たちが60本の真紅のバラを贈ってくれました。60本のバラはすごい!圧巻でした。おもわず涙が溢れました。 私の誕生日にも子供、スタッフ、友人達、また私が診ているワンちゃんのオーナーさんなど思いがけない方々から沢山の花束をいただき私の部屋も病院も花々で満たされました。まさに‘花の還暦’本当に嬉しい限りです。夫と二人で迎える事が出来なかったのは残念でなりませんが、残された私は多くの方々に支えられて、応援されて生かされています。心から感謝しております。

さて私の診療の方はと言いますとこのところ、何件かの動物病院を転院されて当院を受診された方が続きました。しかも痒みが続いておそらくステロイドを内服あるいは外用されて、だんだん効かなくなってあるいは悪化して当院へというパターンが多いです。

痒みを止めるのにステロイドしか選択肢がないという診療は私には信じられません!ステロイドは使いようによっては安価で切れのよい薬です。私も使っています。しかしあくまで’使いよう‘が問題です。なんで痒いのか追求もせず「痒いならまずステロイド!」というのは間違ってます。膿皮症、外部寄生虫、マラセチア・・などをまず除外診断してからが第一歩です。 なんでここまで・・・・とため息をつきたくなる皮膚の子が来るのです。

とにかく皮膚病の基本を常に忘れず一つ一つ除外診断を積み重ねて残るは食物アレルギー?アトピー? はたまた、全く別の自己免疫性を疑う、精神的な問題もあり・・・ときちっとした診断ルートを確立する事が大切だと思っています。

梅雨時期に入ると又外耳炎や皮膚病の外来が増えてきます。耳を体を掻いて掻いて噛んで、毛をむしって・・痒みに苦しんでる子を見るのはオーナーさんとしてはとても辛いです。 一刻も早く痒みをとって楽にしてあげたいという気持ちはよくわかります。 でも‘イソガバマワレ’!

まずどうして痒いのか痒みの本質を見極めて効果的な診療を目指しましょう。痒いならまず“ステロイド”では治る痒みも治らず身体はボロボロという事態も起こりうるのです。 焦るといけません! ワンちゃんを痒みから開放させて、”心安らかに“長生きさせましょう。

日本獣医皮膚科学会学術大会

2012年04月

3月18日に日本獣医皮膚科学会学術大会の総会が埼玉で開催されましたので行ってきました。全国から400名ほどの獣医師が集まっていましたが、見渡す限り、熊本から参加したのは私一人だったようです。

今回は「臨床に生かす免疫の基礎」、「免疫抑制に用いる治療薬」、「免疫から見た皮膚疾患」・・・・等々皮膚免疫に関する講演を主としたものでした。当院でも免疫が関与していると思われる皮膚疾患で通院している子はほんとに一筋縄ではいかず、私も頭を悩ましているところです。本来は自分の身体を外敵から守る免疫機能が自分自身を攻撃する自己免疫疾患が皮膚や粘膜に出るものは難治性と言われ治りが悪いというか、発病すれば一生のお付き合いになる事が多いのです。診断をつけるためにはどんな費用のかかる検査も全部し尽くし、最新の高価な薬を惜しげもなく使うのもいいでしょう。それらの研究も知識も絶対必要です。でも私がこの病院ですべき事はそれらの知識を知った上でその子自身の負担はもちろんいかにオーナーさんの精神的、経済的な負担を減らし効率的な治療指針を立てるかにかかっていると思うのです。 ”楽に長生き・・・”ですよね。なかなか難しい問題ではありますが、新しい知識を取り入れながら一歩一歩あくまでも動物側に添った治療を目指したいと思っております。

抗生剤を飲ませているのに皮膚炎がだんだんひどくなっていく。シャンプーしっかりしてるのにちっとも綺麗にならずに元気もなくなってるみたい・・・こんな症状があるときはどうぞまずは気軽にご相談ください。厄介な自己免疫疾患かもしれません。原因が何なのか?的確な診断、予後の判断が必要です。

昨年は皮膚科学会と大震災が重なりました。そのため、私は東京までは行きましたが横浜の学会会場まで行き着くことができませんでした。あれからもう一年経ちます。各地で復興の機運は高まり大きく動き出しているところも多々ありますが、災害で愛する人を失った人々の悲しみは癒えることはありません。末尾ではありますがここに心よりの哀悼の意を捧げたいとおもいます。



Jonan Sakuma Animal Hospital城南さくま動物病院

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