犬猫の健康と家庭での生活を
より良いものとするために
当院では繁殖を希望されないワンちゃん・猫ちゃんには、雄雌ともに避妊・去勢をすすめています。
発情は交尾をして子孫を残すという本能によるもので、犬猫にとっては自然な行動です。発情しているのに交尾ができないことは、犬や猫にとって大きなストレスの要因となり、ホルモンバランスが崩れ、様々な疾患を引き起こす原因ともなります。
また、発情によって生じる、大きな声で鳴く、外に出たがる、マーキング(尿スプレー)をする、攻撃的になる、トイレ以外の場所で粗相をする等の行動は、人間にとっては問題行動でも、犬や猫にとったら自然な行動です。犬や猫は野生の動物ではなく、人間が人間の為に、その繁殖に関与し創り出した、自然の生態系の中には存在できない動物です。
妊娠を望まれないのであれば、犬猫の健康と家庭での生活をより良いものとするために、私たち人間が家族である犬猫を「自然」から生じるトラブルから守ってあげることが必要ではないでしょうか。
避妊・去勢のメリット
避妊手術のメリット
- 望まない妊娠を予防
- 発情によるストレスの軽減
- 飼主さんにとって問題となり得る発情行動の軽減
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乳腺腫瘍の予防
避妊手術を受けていない動物は、発情に伴うホルモンの分泌により乳腺が刺激され、乳腺腫瘍になる可能性が高いとされています。発情前などのなるべく早い時期に避妊手術を行うことで大幅に発生率を抑えることができます。(2歳齢以降に避妊手術を行う場合は、避妊手術を行っていない場合と比べても発生率はあまり変わらなくなります。)
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子宮蓄膿症の予防
子宮内に膿が溜まってしまう命に関わる病気です。黄体ホルモンの分泌が関与しており、避妊手術を受けることで発症を防ぐことができます。
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卵巣腫瘍などの予防
卵巣を摘出することで、これらの腫瘍が発生しなくなります。
去勢手術のメリット
- 発情によるストレスの軽減
- 攻撃性、大声で鳴く、マーキングなどの飼主さんにとって問題となり得る行動を軽減
- 精巣腫瘍や前立腺肥大のようなトラブルの予防
- 会陰ヘルニアや肛門周囲腺腫などの疾患の予防
避妊・去勢のリスク
- 体への負担
手術後に食欲不振や吐き気、活動量の低下がみられることがありますが、通常は一時的なものです。
- 麻酔のリスク
術前検査を行いますが、まれに術前検査では予測できない麻酔過敏症や麻酔合併症が起こる可能性があります。
- 肥満
避妊・去勢手術によってホルモンバランスが変化し、基礎代謝が減ることで太りやすくなります。術後はフードの見直しが必要です。
- 尿失禁
性ホルモンの減少により、避妊手術を行った大型犬が高齢になると尿失禁となる場合があります。発症した場合はホルモン剤を使用し治療するのが一般的です。
避妊・去勢手術はそれぞれメリットとデメリットがあるので、手術前に獣医師としっかりと相談し、理解した上で手術を検討することが大切です。
手術方法と時期
避妊・去勢手術の時期
- 避妊手術
- 生後6ヶ月齢
- 去勢手術
- 生後6ヶ月齢
また大型犬は早めの手術をお勧めします。
一度発情期を迎えた場合、手術後も発情行動が残ることもあるようです。発情期を迎える前の避妊手術をお勧めします。
手術の流れ
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1.手術前の検査と準備
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手術前には血液検査や健康診断を行い、手術の適応を確認します。
(5歳未満のワンちゃんは血液検査が必要となり、5歳未満のネコちゃんは血液検査は必須ではありませんがお勧めしています。5歳以上のワンちゃん猫ちゃんは血液検査と胸部レントゲン検査が必須となります。) - 手術日の前日0時以降は絶食をしていただき空腹状態を作っていただきます。(お水は当日も飲ませても構いません。)
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手術前には血液検査や健康診断を行い、手術の適応を確認します。
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2.お預かり
- 手術当日は朝10時までにご来院ください。担当獣医師が手術の説明を行い、ワンちゃん、猫ちゃんをお預かりいたします。
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3.術前投与
- 手術前に抗生剤や鎮痛剤を投与してワンちゃん・猫ちゃんを眠らせ、痛みを和らげます。
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4.麻酔の投与
- ワンちゃん猫ちゃんの状態に合わせて適切な麻酔薬の組み合わせを検討し、安心安全な麻酔を管理を行います。
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5.手術
- 避妊手術では、女の子の場合は卵巣と子宮を取り去る卵巣子宮全摘出手術、男の子の場合は精巣を取り去る精巣摘出手術を行います。
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6.手術後の経過観察
- 手術後は麻酔から覚めるまでの間、経過を見守ります。
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7.退院
- 経過が良好であれば、手術当日の夕方にお迎えに来ていただき退院となります。
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8.抜糸
- 手術後1週間後に再度来院頂き、抜糸を行います。