ワンちゃんや猫ちゃんはとても好奇心旺盛なので、思いがけないものを飲み込んでしまうことがあります。これまでに内視鏡や開腹手術で摘出されたものとして、ぬいぐるみのくまさんの足やおもちゃのねずみさん、大量の髪の毛、ダイヤモンド、靴下・・等と色々なものを経験してきました。

誤って飲んだものは、症状が出ずにそのまま便と一緒に出ることもありますが、内臓を傷つけたり、命にかかわることもあります。今回は、ワンちゃんや猫ちゃんにとって毒になる食べ物や植物ではなく、物理的に危険な異物について、その症状や対処法、動物病院での処置方法などをお伝えします。

ワンちゃん猫ちゃんにとって危険な誤飲・誤食しやすい物とは?
ワンちゃんや猫ちゃんは好奇心旺盛で、いろいろなものを口にしてしまいます。特に子犬さんや子猫さんは、新しいものに対する興味が強く、誤って飲み込むリスクが高いです。誤飲誤食によく見らえる危険なものとして次のようなものがあります。

  • おもちゃ:遊ぶために口にするおもちゃは、ちょっとした拍子に飲み込んでしまうこともあります。特に破損した部分や小さな部品を飲み込むことが多いです。
  • 骨や竹串など:骨や竹串などの尖ったものは、消化器官を傷つけ、内臓にダメージを与える恐れがあり、場合によっては命にかかわることもあります。こういったものは絶対に触れさせないようにしましょう。
  • 糸状のもの:毛糸や紐、リボンなどは、特に猫が好んで遊びますが、誤って飲み込むと、体内で絡まってしまうこともあり危険です。口や肛門から出ている糸を無理やり引っ張ると内臓を傷つけることもあるので、引っ張らないようにしてください。

    (お腹から摘出した紐)
  • 衣類・布:靴下やタオルは一部でも飲み込むと、消化器官に詰まるリスクがあります。
  • プラスチック・ゴム製品:ビニール袋やゴムボールなどは、誤って飲み込むと窒息をしたり、消化管に詰まることがあります。
  • ジョイントマット:ワンちゃん・猫ちゃんの足腰の負担軽減のために利用されているご家庭も多いかと思います。弾力性があり、ワンちゃん・猫ちゃんによって噛み応えがあるらしく、かじって飲み込んでしまうことがあります。
  • ペットシーツ:ペットシーツをビリビリに破って遊ぶワンちゃん猫ちゃんもいるのではないでしょうか。破くだけならまだしも、それを飲み込んでしまうこともあります。少量なら便と一緒に排出されることもありますが、大量に食べると、シーツの素材が胃の中で膨らみ、危険です。
  • 人間の薬やたばこ:飼い主さんが普段口にしているからこそ、ワンちゃん・猫ちゃんが興味を持って、うっかり落とした時に美味しいものと思って食べてしまうこともあります。

他にもチョコレートや玉ねぎ、レーズンなど人間が美味しく食べるものでもワンちゃん・猫ちゃんにとっては有害であったり、中毒性の高い植物などもあります。(これについては後日。。。)

誤飲・誤食の症状
ワンちゃん・猫ちゃんが誤って物を飲み込んだ場合、その影響は、飲み込んだものの種類や量、そして体格によって異なります。中には、症状が出ず便とともに自然に排出されることもありますが、気道、食道、胃、腸に異物が詰まってしまうこともあります。もし気道に異物が詰まった場合や、食道に詰まった異物が大きくて気管を圧迫すると、呼吸困難となるので、すぐに気道を確保が必要があります。また、胃や腸に物が詰まってしまうと、嘔吐や食欲不振、腹痛などの症状が見られます。更に、飲み込んだ物で内臓などを傷つけてしまうこともあります。

誤飲誤食をした場合、よく見られる症状として:

  • 嘔吐や食欲不振
  • 元気消失
  • お腹を痛がる仕草(丸まる、鳴く)
  • 呼吸困難

これらの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。早期の対応が、ワンちゃん・猫ちゃんの健康と命を守る鍵となります。

誤飲・誤食の診断
誤飲・誤食の診察では、まずは症状や飲み込んだ可能性のある異物についての情報を確認します。その後、触診や血液検査を行い体の状態をチェックします。そして、次に、腹部のレントゲン検査やエコー検査を行い、異物の位置や体内の状態を詳しく調べます。レントゲン検査では金属や骨、石など硬い異物を確認するのに適しています。エコー検査はレントゲンでは見えにくい柔らかい異物や腸の状態をチェックするために使われます。また、場合によっては、内視鏡検査で食道や胃など上部消化管にある異物を直接確認し、取り除くことも行います。

誤飲・誤食の治療
ワンちゃん・猫ちゃんが誤って異物を飲み込んだ場合、その治療方法は、飲み込んだ物の種類や大きさ、位置、そしてワンちゃん・猫ちゃんの全体の状態によって変わります。

まず、もし異物が小さく、消化器官を傷つけるリスクが低い場合は、経過観察を行い、自然に便とともに排出されるのを待ちます。また、胃などに異物が留まっていて、吐かせても安全だと判断された場合には催吐処置を行います。ただし、食道や胃にある異物が尖っていて、消化管を傷つける恐れがある場合は、内視鏡を使って異物を取り除きます。

(内視鏡で取り出したオリーブ)

一方、異物が大きい場合や、消化管に詰まって腸閉塞や腸穿孔のリスクが高い場合は、外科手術が必要となります。手術では、異物を安全に取り除くために開腹手術が行われ、腸や胃に切れ目を入れて取り出したり、損傷がひどい部分の腸を一部切除することもあります。

治療後は、術後ケアが大切です。食事制限や特別な食事を勧め、消化管の炎症を抑えるために薬を処方します。さらに、定期的な検診で術後の経過を確認し、問題がないかをチェックします。

全体として、早期の診断と適切な治療が、ワンちゃんや猫ちゃんの健康を守るために非常に重要です。

誤飲・誤食を防ぐために
誤飲・誤食は、生活環境を整え、家族全員が気を付けることである程度防ぐことができます。以下のポイントを参考に、愛するペットの安全を守りましょう。

  • 家の中の環境を整える
    ワンちゃんや猫ちゃんが誤って飲み込む可能性のあるものはワンちゃんや猫ちゃんの届かない場所に保管しましょう。毒性のある植物や家に置かないようにし、食材も冷蔵庫や密閉容器にしまっておくことが大切です。
    ※ 美味しくないからと油断はしない
    ワンちゃんや猫ちゃんは、必ずしも「美味しい」から物を口にするわけではありません。興味本位で何でも触って噛んでみるため、床などに落ちているものもよくチェックし、危険なものがないか確認しましょう。
  • 安全なおもちゃを選ぶ
    耐久性が高く、壊れにくいおもちゃを選び、ワンちゃん猫ちゃんが飲み込めない大きさのものを使用しましょう。そして、おもちゃは与えっぱなしにするのではなく、おもちゃで遊ぶ際には目を離さないようにしましょう。ボタン電池が入ったおもちゃは電池を飲み込んだ場合に化学反応で腸に穴が開くことがあるため特に注意が必要です。
  • しつけをする
    ワンちゃん・猫ちゃんが食べてはいけないものを口にした場合、すぐに出すように訓練できると安心です。ワンちゃんの場合は、指示によって口の物を出すしつけや、指示により口にするしつけをしていると、万が一のときに助かります。

誤飲誤食は、ワンちゃん・猫ちゃんにとって非常に危険な事態ですが、家族が注意することで予防可能です。愛するワンちゃんや猫ちゃんの健康を守るために、改めて生活環境を見直してみてはいかがでしょうか?

もし誤飲・誤食が起こった場合は、冷静に状況を確認し、速やかに動物病院を受診してください。