【コラム】歩き方が変？小型犬のパテラに注意！｜お知らせ｜さくま動物医療センター

2025.05.30

コラム

【コラム】歩き方が変？小型犬のパテラに注意！

後ろ足をひょいっと上げて歩く…それ、パテラかもしれません

「最近、うちの子の歩き方がなんだか変」「片足を上げたまま歩いている」
そんな様子が見られたら、膝蓋骨（パテラ）脱臼の可能性があります。

膝蓋骨脱臼は、トイプードルやチワワなどの小型犬に多く見られる整形外科疾患で、放置すると関節の変形や歩行困難につながることもあります。
ワンちゃんのパテラという言葉をお聞きになられたことがあるかもしれませんが、パテラとは膝蓋骨脱臼の俗称です。
今回は、犬のパテラについて、症状・原因・治療法・予防法を詳しくご紹介します。

パテラ（膝蓋骨脱臼）とは？

通常、膝蓋骨（膝のお皿の骨）は大腿骨（太ももの骨）の溝の中にしっかり収まっていて、膝を曲げ伸ばしする際にスムーズに動きます。しかし、パテラ（膝蓋骨脱臼）とは、この膝蓋骨が溝から外れてしまう状態のことをいいます。

正常な状態と膝蓋骨が外れた状態

膝蓋骨が膝の内側にずれる状態を「内方脱臼」、外側にずれる状態を「外方脱臼」と呼びます。多くのわんちゃんでは内方脱臼が見られます。軽度の場合は自然に戻ることもありますが、繰り返すうちに関節に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。

パテラになりやすい犬種

パテラは主に小型犬や若齢犬で多く見られます。特に以下の犬種は発症リスクが高いとされています：

トイプードル
チワワ
ポメラニアン
ヨークシャーテリア

パテラの原因

パテラ（膝蓋骨脱臼）の原因は、大きく分けて「先天性」と「後天性」の2つがあります。

先天性（生まれつきの異常）：
先天性の膝蓋骨脱臼は、膝の骨格や筋肉の配置に異常があり、膝蓋骨を支える大腿骨の溝が浅いことが原因です。成長とともに脱臼が起こりやすくなり、特に小型犬に多く見られるタイプです。

後天性（生活環境やケガによるもの）：
後天性のパテラは、高い場所からのジャンプや落下、交通事故、滑りやすい床での生活など、物理的な衝撃や負担によって発症します。特に骨の細い小型犬は外的な衝撃に弱く、日常生活のちょっとした動きでも注意が必要です。

パテラの症状・こんなサインに注意！

次のような症状が見られる場合、膝蓋骨脱臼の可能性があります：

スキップするような歩き方：
歩行中に突然後ろ足を浮かせてケンケン歩きになる
片足をあげたまま歩く・立つ
外れた膝蓋骨が自然に戻らず、痛みや違和感がある
歩行がぎこちない・O脚のようになる：
両足に脱臼がある場合や慢性化している場合に見られる
後ろ足を伸ばしてブルブル振る：
外れた膝蓋骨を自分で元の位置に戻そうとしている行動
膝を触られるのを嫌がる：
痛みがあるサイン。触ると怒ったり逃げたりすることも
足が曲がったまま伸びない：
脱臼が長期化し、筋肉や関節が固まってしまっている可能性がある

見た目は元気でもこうした症状が見られる場合は、関節に異常があるサインかもしれません。早期発見がとても重要ですので、少しでも気になる症状があれば、早めに動物病院を受診しましょう。

パテラの重症度（グレード分類）

パテラ（膝蓋骨脱臼）は、その状態によって4段階のグレードに分類されます。グレードが上がるほど、症状は重くなります。

グレード1：
膝蓋骨は通常、正常な位置にあります。手で押すと外れますが、すぐに戻ります。症状はほとんどなく、まれに外れた時に「キャン」と鳴いて後ろ足を挙げたり、スキップのような歩き方をすることがあります。

グレード2：
普段は膝蓋骨は正常な位置にありますが、後ろ足を曲げた際に頻繁に脱臼します。後ろ足を伸ばしたり、手で押したりすると元に戻りますが、脱臼時は後ろ足が着けずにケンケン歩きになることもあります。

グレード3：
膝蓋骨が常に外れたままの状態で、自然には戻りません。ただし、手で押すと元に戻ります。痛みが出やすくなり、後ろ足を引きずるなどの歩行異常が見られます。

グレード4：
膝蓋骨が常に外れており、手で戻すこともできません。歩行困難に陥るほか、関節、骨の変形が進行していることも多く見られます。

早期発見・早期治療が非常に重要です。定期的な健康診断や、少しでも歩き方に違和感を感じた際には、早めにご相談ください。

パテラの治療法：保存療法と外科手術

パテラの治療法は、グレードや症状の程度によって異なります。

保存療法
グレード1〜2程度で、症状が軽い場合や高齢・持病などで手術が難しい場合には保存療法を行います。具体的には、鎮痛剤やサプリメントの投与、無理のない運動管理、滑りやすい床など生活環境の見直し、肥満の場合には減量などです。保存療法は、痛みを取り除き、症状の進行を抑える対症療法で、根本な治療ではありません。そのため、将来的に症状が悪化する可能性があることに注意が必要です。

外科手術
グレード2以上で、歩行異常や痛みが頻繁にある場合、または根本的な治療を希望する場合は、外科手術を行います。特に骨格の成長が著しい時期には、パテラによって骨格や筋肉の形成異常が進行する可能性があるため手術を積極的に勧めることもあります。手術には、膝蓋骨を支える大腿骨の溝を深くする「滑車溝造溝術」や膝蓋骨が正しい位置で安定するよう、靱帯の付着部を調整する「脛骨粗面転移術」、骨のねじれや変形を矯正する「骨切り術」などさまざまな術式があります。手術法は犬種・年齢・体格・症状によって異なります。獣医師としっかり相談しながら方針を決めましょう。

術後のリハビリ・ケアも重要！

術後は、包帯やサポーターを1週間ほど装着し、4〜8週間は安静が必要です。回復期間中は、行動を制限しつつリハビリを行うことで、筋肉の衰えを防ぎ、早期回復を目指します。術後のケアを丁寧に行えば、多くのわんちゃんが快適な歩行を取り戻すことができます。

おうちでできるパテラの予防法

パテラは遺伝的な要因もありますが、生活習慣を見直すことで発症や悪化を防ぐことが可能です。

体重管理：
体重が重すぎると膝関節に大きな負担がかかり、運動能力の低下や関節の炎症を引き起こしやすくなります。適正体重を維持しましょう。
適度な運動：
無理のない散歩などで膝まわりの筋肉を鍛えることが大切です。ただし、高所からのジャンプや激しい動きは脱臼を悪化させることがあるため要注意です。
生活環境の改善：
滑りやすいフローリングは足腰に負担をかけます。マットやカーペットを敷いて転倒を防ぎましょう。
定期的な足のお手入れ：
爪や足裏の毛が伸びすぎると滑りやすくなります。こまめにケアしましょう。

パテラの手術を無事終えて退院するリンちゃん