ワンちゃんや猫ちゃんが骨折することは、飼い主としては非常に心配な状況ですよね。今回は、ワンちゃんや猫ちゃんの骨折について、何に注意をして、万が一が起こってしまった時にどうしたらいいのか、今回は特に足の骨折の話について当院で行っている診断や治療などについてお話したいと思います。

骨折とは??
骨折は、骨が折れたり、ひびが入ったりすることです。
ワンちゃん猫ちゃんが骨折する原因はたくさんありますが、交通事故や高い場所から落ちたり、ドアに挟まれるなど、外からの衝撃によるものが一般的です。最近では小型犬が抱っこされている時に落ちたり、椅子等から飛び降りた時に骨折してしまうことがよくあります。特に、前肢が細いイタリアン・グレーハウンドやトイプードル、柴犬、チワワ、ポメラニアン等の小型犬は、骨折しやすく、多くが1歳未満のワンちゃんに見られます。好奇心旺盛で活発なことも関係しているようです。

猫ちゃんの場合は、外での事故や外傷、家の中の高いところから落ちてしまって骨折することが多く、後ろ足の骨折が多いです。猫ちゃんの骨折は、年齢に関係なく起こるようです。

骨折の症状
ワンちゃん猫ちゃんが骨折した時の症状には、痛みや腫れ、変形、折れた足をあげて歩くなどがあります。体の特定の部分を触ると鳴く、腫れて熱を持っている、足を地面につけない、歩こうとしない等の症状がある場合は、すぐにご来院ください。

骨折をした場合は
もしワンちゃん猫ちゃんが骨を折った場合、まずは落ち着いて、ワンちゃん猫ちゃんを安定させることが大切です。ワンちゃん猫ちゃんを安静に保ち、動かさないようにしましょう。骨折した場所を動かすと、痛みが増えるだけでなく、骨や周囲の組織をさらに傷つけてしまう可能性があるので注意が必要です。もし骨が折れたところの皮膚が切れている場合は、清潔なガーゼや布で傷口を覆い、出血を止めるために圧迫します。動物病院に連れていく時も安定した状態での移動が大切なので、ケージやキャリーなどを使って、振動や動きをできるだけ少なくしましょう。痛みもあるためワンちゃん猫ちゃんがパニックになっていることもあります。押さえると逆に暴れてしまう場合やオーナー様が咬まれてしまう場合もあるので、そんな時には一旦待ってから静かにできるスペースやケージに移動させてあげてください。

骨折の診断と評価
ワンちゃん猫ちゃんの骨折を診断し評価することは、治療のためにとても大切な第一歩です。まず、獣医師が事故の詳細や動物さんの病歴を聞いて、全身の状態を確認しながら、骨折しているかもしれない部分を視診と触診で診察します。視診では変形や腫れ、異常な動きなどをチェックします。触診では痛みや不安定さ、骨が飛び出しているかどうかなどを確認します。この初めの診察で骨折の可能性を評価します。

次に、画像診断を行い、骨折の確定診断をします。X線検査が最も一般的で、骨折の場所や形、骨のずれがないかを確認します。いろいろな角度から撮影して、詳しく調べます。複雑な骨折や関節内の骨折など、さらに詳しく調べる必要がある場合にはCTスキャンで撮影します。これらの画像診断で、骨折の正確な場所、種類、重症度を把握します。

手術が必要な場合や全身状態の評価が必要な場合には、血液検査やエコーなども含めたスクリーニング検査行い、全身の健康状態を確認します。集めたデータを基に、獣医師が骨折の種類や重症度を評価し、治療方法を選択し決定します。この段階では、ワンちゃん猫ちゃんの痛みを和らげながら、早く正確に状況を把握することが大切となります。

骨折の治療と手術
単純な骨折で、骨折した部分の位置のずれがなくて、外固定の適応範囲の骨の骨折であることや、安静に保つことができるなどの要件を満たす場合は、ギプスやスプリントを使って骨を固定する方法を使う場合もあります。これで骨が正しい位置に保たれ、自然に治るのを助けます。固定期間中は、ワンちゃん猫ちゃんの活動を制限し、静かに過ごさせることが大切です。また、定期的に診察して、固定具の状態や骨の回復具合を確認します。

複雑な骨折や重度の骨折、より安定性の高い固定方法が望ましい場合は、手術が必要になります。手術の目的は、骨を正しい位置に戻し、固定することで、直りを早めることです。一般的な骨折手術の方法には、骨プレートとスクリューの使用、ピンニングなどがあります。

骨プレートとスクリューは、骨をしっかりと固定するために使われます。特に長い骨の骨折に有効です。手術中、骨を正しい位置に戻した後、金属製の薄い板のプレートを骨の外側に置き、スクリューで骨とプレートを固定します。この方法は、骨をしっかりと安定させ、早く動けるようにするため、治りを早めることができます。しかし開放骨折(骨が折れて皮膚を突き破り外に出ている状態のこと)のように汚れた骨やスクリューを打つ場所が確保できない部位、細い骨には使用できません。

ピンニングは、骨の中心にピンを入れて固定する方法です。骨折の部位や種類の関係でプレート固定が難しい場合や、若い子や成長期の骨折に適応する場合があります。手術中、骨を正しい位置に戻した後、ピンを骨の中心に入れ、骨の内側から固定します。ピンは骨の髄腔(骨の中の空間)に通されて、骨の長い部分に沿って置くか皮質骨(骨の外側の硬くて密度の高い部分)に固定します。ピンニングは、関節の近くや骨の端の部位の骨折にも使用できますが、回転や圧迫に対する固定力はプレートよりも弱いので添え木やギプスなどと一緒に使用することが多いです。

創外固定は、当院では実施しておりませんが、皮膚の外側から骨折部位を固定するためのフレームを使用います。複雑な骨折や感染のリスクがある場合に使います。外固定装置は、骨折部位の上下にピンを入れ、ピンを外側のフレームで固定します。これにより、骨折部分が安定し、骨が正しい位置で治ります。外固定装置の利点は、骨の治り具合を見ながら治療を調整できる点や開放骨折のように骨に感染がある場合でも使用可能な点にあります。

それぞれの手術方法には、利点と欠点があります。術後もワンちゃんネコちゃんの管理と維持に細心の注意が必要です。治療方法の選択は、骨折の種類、位置、動物の年齢や健康状態などを考慮して獣医師が判断し提案いたします。

骨折の回復
手術終了後は、ワンちゃん猫ちゃんの状態を安定させるために、痛み管理、感染予防、適度な運動制限など集中管理を行います。また、術後のフォローアップとして、定期的な診察や追加のX線検査を行い、骨の治り具合を確認します。骨折の部位や固定方法によっては、骨が治ってきたらピンを抜いたり少しずつスクリューの本数を減らす手術を行うことがあります。

骨折したワンちゃんや猫ちゃんの回復には、時間がかかります。骨の治りを助け、筋力や可動域を回復させるために、獣医師が適切なケアやリハビリを指導します。リハビリには、軽い運動やストレッチング、マッサージ、冷却療法などが含まれます。回復期間中は、ワンちゃん猫ちゃんに無理な運動や負担をかけないよう注意が必要です。

ワンちゃん・猫ちゃんの骨折は、急を要する状況ですが、適切に処置をすれば回復します。まずは、愛するワンちゃん、猫ちゃんが骨折をしないように注意して、そして万が一骨折した場合は焦らずに、獣医師と協力して、ワンちゃん猫ちゃんの回復に最善を尽くしましょう!