「新しく迎えたワンちゃんが急に咳をしはじめた!」なんてことはありませんか??ワンちゃんの咳には、感染症やアレルギー、肺や心臓の病気など様々な原因があります。今回はその中でも子犬さんによく見らえる「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」についてお話ししようと思います。

ケンネルコフとは??
ケンネルコフKennel Cough は直訳すると「犬舎咳」です。咳を主症状とする上部気道感染症(ウィルス・細菌)の総称​で、伝染する咳・鼻水・くしゃみの病気​のことです。ケンネルコフは、様々なウイルスや細菌によって引き起こされる感染症で、その中でも犬パラインフルエンザや犬アデノウイルスII型のウイルスや気管支敗血症菌が主要な原因となります。これらの病原体は、感染した犬の咳やくしゃみによって空気中に放出され、他の犬がそれを吸い込むことで感染します。なので、特に犬が多く集まる環境で広まりやすく、保護施設や多頭飼育下などで一頭が感染すると次々に伝染してしまうことがあります。​

ケンネルコフの病原体

ケンネルコフの症状
ケンネルコフに感染した犬は、病原体によって差があるもののおおむね3日から7日程の潜伏期間があり、その後乾いた咳などの症状が出始めます。咳は喉に何かが詰まっているかのような「ガーガー」や「カッカッ」という音がして、ワンちゃんが頻繁に咳き込むようになります。特に運動の後や興奮した時、夜間に悪化することが多く、飼い主さんが異物を誤飲したと誤解することもあるほどです。時々咳の発作が激しくて、ワンちゃんが喉を擦るような仕草を見せることもあります。

咳以外にも、鼻水やくしゃみ、目やに、発熱を伴うことがあります。悪化すると咳や発熱により元気や食欲も低下し、体重減少につながることもあります。軽度であれば、ワンちゃん自身の免疫力で1〜2週間ほどで症状が収まることが多いです。しかし、症状が重篤化する場合や長引く場合には注意が必要です。特に子犬さんや高齢犬、免疫力の低下したワンちゃんは、肺炎などの二次感染を引き起こして命に関わることもあります。

ケンネルコフの症状

ケンネルコフの検査・診断
ケンネルコフの診断や治療を適切に行うために、まずは獣医師がワンちゃんの症状について確認をします。咳の様子や頻度、音の特徴、その他の症状(例えば鼻水や発熱)について飼い主さまに話を伺い、触診や聴診で症状等を確認します。臨床現場では、症状から診断することが多く、必要に応じてレントゲン撮影をしてワンちゃんの気管や気管支、肺の状態を確認したり、白血球数やCRP(C反応性タンパク)を確認して感染の程度や炎症の状態を把握し、適切な治療に繋げます。

ケンネルコフの治療
診断が確定した場合でも病原体がウイルスであった場合は直接ウイルスを退治する薬剤がないため、治療は症状にあった対症療法が中心となります。細菌感染を抑えるための抗生物質や咳を和らげるための鎮咳剤の投与、必要に応じて体力回復のための点滴等を行い、免疫力を高めて自然治癒を進めていきます。

ケンネルコフには予防を!
ケンネルコフは様々な病原菌によって引き起こされるため、完全に予防することは難しいですが、ワクチン接種によって発症や重症化のリスクを低くすることができます。ドッグランやペットホテルなどワンちゃんが多く集まる場所に行く予定がある場合は、事前にワクチン接種を行うことで感染リスクを減らしてあげましょう。また、必要なワクチン回数を接種し終えていない子犬さん等は、ワンちゃんのたくさん集まる場所は避けましょう。

多頭飼育をしていて、もしケンネルコフに感染したかもしれないワンちゃんがいる場合はそのワンちゃんは別のワンちゃんとは離して、ケージや食器などの消毒を行い感染の蔓延を防ぐために環境を整えることが重要です。

大切なワンちゃんの健康を守るために飼い主としてできることは、予防と早期対応の重要性を忘れずに、日常的にワンちゃんの健康状態を観察して、異常があればすぐに対応することです。咳の原因にはケンネルコフだけではなく、心臓病やフィラリア症をはじめ様々な病気の可能性があります。もしもワンちゃんが咳をしている場合や、ケンネルコフに関する疑問がある場合は、ぜひ当院までご相談ください。
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