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【コラム】ごはんが痛いニャ…猫ちゃんの口内炎
口内炎、私たち人間でもできたらご飯を食べるのが辛くなりますよね。猫ちゃんにとっても同じです。猫の口内炎は、比較的多くみられる病気ですが、痛みが強くなるとごはんを食べられなくなってしまうこともあり、命に関わるケースもあるため注意が必要です。 今回は、猫の口内炎の原因や症状、治療法、そして予防についてご紹介します。
🦷猫の口内炎とは
猫の口内炎とは、口の中に炎症が起こる病気です。歯肉や舌の付け根、口の奥、頬の内側などが赤く腫れたり、ただれてしまったりすることがあり、強い痛みをともないます。よだれが増えたり、食欲が落ちたりすることもあります。軽度であればお薬で治ることもありますが、慢性化や再発が多く、完治しないケースも少なくありません。
🐾猫の口内炎の原因
猫の口内炎には、明確な原因が1つあるわけではなく、いくつかの要因が重なって発症することが多いと考えられています。代表的な原因の一つがウイルス感染です。猫カリシウイルス、猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)などのウイルスに感染している猫ちゃんは、免疫力が低下し、炎症が治りにくくなります。また、歯垢や歯石がたまっていると、細菌が増えやすくなり、炎症が慢性化してしまうこともあります。
さらに、猫の体の免疫が過剰に働いてしまい、自分自身の口の中の組織を攻撃してしまうこともあります。これを免疫異常と呼びますが、こうなると炎症はなかなか治らず、長く続いてしまいます。
ストレスや、加齢による免疫力の低下、全身の病気(たとえば腎臓の病気)などが影響することもあり、完全な原因がまだ判明していない難しい病気でもあります。
🐱猫の口内炎の症状
猫の口内炎は、初めは気づきにくいことがありますが、進行するにつれてさまざまな変化が見られるようになります。食欲はあるのに、食べ始めてすぐにやめてしまったり、食べるのに時間がかかるようになったり、硬いフードを嫌がって食べづらそうにすることがあります。また、食事中に鳴く、食後に口元を気にするなどの様子も見られます。
よだれが増えることもあり、中には血が混じったよだれが出ることもあります。また、口臭が強くなるのも特徴です。猫ちゃんは痛みや不調を隠そうとする習性がありますが、口を気にして前足でこすったり、顔まわりを触られるのを嫌がるようになったら、かなり不快感がある状態と考えられます。
さらに、痛みのせいで毛づくろいをしなくなり、毛並みがぼさぼさになることもあります。毛づくろいは猫にとって大切な習慣なので、それをやめてしまうというのは、体調が良くない大きなサインです。重症になると、ごはんや水がほとんど摂れなくなり、体重が大きく減少し、脱水や衰弱、「肝リピドーシス」など命に関わる状態に陥ることもあります。
🩺猫の口内炎の診察(検査・診断)
診察ではまず、猫ちゃんのお口の中の様子を丁寧に観察します。歯肉の腫れや出血、歯石の量、炎症の範囲などを確認し、痛みの有無や程度をチェックします。ただし、口を開けるのが難しい猫ちゃんも多いため、必要に応じて鎮静や麻酔をかけたうえで詳しく検査を行います。
また、口内炎にはウイルス感染や体調の不調が隠れていることがあるため、血液検査を行って全身の状態を確認や、免疫に関わるウイルスの有無を調べます。そのほか、必要に応じてレントゲン検査で歯やあごの骨の状態を確認したり、細菌の感染が関係しているかを調べることもあります。炎症の原因が歯のトラブルなのか、免疫の異常なのか、あるいはウイルスや他の病気によるものなのかを総合的に判断することで、猫ちゃんに合った治療を考えていきます。
💊猫の口内炎の治療方法
口内炎の治療にはいくつかの方法があり、症状の重さや猫ちゃんの体調によって最適なものを選びます。軽い炎症であれば、消炎剤や痛み止め、抗生物質などのお薬を使って痛みや腫れをおさえる治療を行います。しかし、口内炎は再発しやすく、こうしたお薬の効果が一時的にとどまってしまうケースも少なくありません。
何度もくり返してしまう場合や、炎症の範囲が広く痛みが強い場合には、根本的な原因となる歯や歯周組織を取り除くために「抜歯」を行います。一部の歯を抜くだけで済むこともありますが、症状が重い場合には、奥歯やすべての歯を抜くこともあります。驚かれるかもしれませんが、歯をすべて抜くことで痛みがなくなり、元気になってごはんをしっかり食べられるようになる猫ちゃんも多いです。また、ウイルス感染などが関係している場合には、免疫を整えるためのお薬や、補助的なサプリメント、栄養管理なども治療の一環として取り入れられます。
口内炎は「完全に治る」のが難しい病気のひとつですが、適切な治療とケアで、痛みをやわらげ、快適に過ごせるようにしてあげることができます。猫ちゃんの様子をよく見ながら、その子に合った方法で治療を進めていくことが大切です。
💫猫の口内炎の予防
口内炎を完全に防ぐことは難しいですが、日ごろのケアや生活環境の工夫でリスクを減らすことはできます。まずは、お口の中をできるだけ清潔に保つことが大切です。歯磨きやデンタルガム、口腔ケア用サプリメントなどを利用して、歯垢・歯石の蓄積を防ぎましょう。歯磨きが難しい場合でも、口元を触られることに慣れさせるだけでも将来のケアがしやすくなります。
さらに、猫カリシウイルスなどの感染予防のために、定期的なワクチン接種も欠かせません。完全に感染を防ぐことはできなくても、症状の重症化を防ぐことができます。また、猫が安心して過ごせる静かで快適な環境を整えることも、免疫力を保つうえで大切です。ストレスの少ない生活が、病気の予防にもつながります。
口内炎はつらい病気ですが、早めに気づき、適切な治療を行うことで猫ちゃんの生活の質を大きく改善することができます。日々の様子をよく観察し、少しでも気になることがあれば、早めに動物病院へ相談してください。それが、大切な猫ちゃんの健康を守る第一歩です。