ワンちゃん・猫ちゃんのトラブルとして多いものに、「誤飲・誤食」があります。
以前のコラム (コラム:こんなものを!? 誤飲・誤食にご注意!)では、おもちゃや紐などを飲み込むことで起こる「腸閉塞」や「消化管損傷」など、物理的な危険についてお話ししました。今回は、「誤飲・誤食」による「中毒」について、食べてしまった時に見られる症状や、ご家庭でやるべきこと・やってはいけないこと、そして動物病院で行う治療についてお話しいたします。

中毒とは

中毒とは、食べたものに含まれる成分が体に吸収されることで、肝臓や腎臓、神経などにダメージを与えてしまう状態です。ワンちゃんや猫ちゃんの中毒は、特別な薬品だけで起こるわけではありません。私たちの身の回りにある食べ物や植物、薬、日用品などでも中毒を起こすことがあります。例えば、

  • チョコレート
  • 玉ねぎ・ニンニクを含むネギ類
  • キシリトール
  • ブドウ・レーズン
  • 人の薬
  • ユリなどの植物

などは、ワンちゃんや猫ちゃんにとって危険なものとしてよく知られています。また、人では問題なく使っている薬でも、犬や猫には中毒を起こすことがあります。さらに、洗剤や保冷剤、タバコなどの家庭用品でも中毒を起こすことがあります。「まさかこんなものを食べるなんて…」というケースも少なくありません。

(以前のブログ(家庭の園芸菜園と犬猫の関係性)では、家庭菜園や観葉植物など、犬猫に注意が必要な植物についてもご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。)

中毒の症状は、食べたものの種類や量によってさまざまです。

よく見られる症状としては

などがあります。さらに、毒の種類によっては肝臓や腎臓、神経などに深刻な障害を引き起こすこともあります。重症になると命に関わる場合もあります。

中毒は食べた直後ではなく、数時間〜半日ほど経ってから症状が出る場合もあります。食べた直後は元気に見えていても、体の中では有害な成分が少しずつ吸収され、肝臓や腎臓などの臓器にダメージを与えていることがあります。そのため、「今は元気そうだから大丈夫」と自己判断して様子を見ているうちに、症状が悪化してしまうこともあります。

さらに、ワンちゃんや猫ちゃんは体が小さいため、人では問題にならない量でも中毒を起こすことがあります。中には、ほんの少量でも命に関わるものもあります。例えば猫ちゃんでは、ユリを少し舐めたり、花粉が付いた毛づくろいをしただけでも重い腎障害を起こすことがあります。

そのため、「今は元気だから」「少ししか食べていないから」と自己判断するのは危険です。中毒は早く治療を始めるほど助かる可能性が高くなるため、少しでも中毒が疑われる場合は、できるだけ早く動物病院へ相談しましょう。

食べてしまった時にまずやること

ワンちゃんや猫ちゃんが危険なものを食べてしまった時は、まず落ち着いて状況を確認しましょう。
まず確認していただきたいのは、

  • 何を食べたのか
  • どれくらい食べたのか
  • いつ食べたのか

の3つです。
可能であれば、食べたもののパッケージ や成分表示 、写真などを一緒に動物病院へ持参すると、診断や治療の助けになります。食べたものによっては、症状が出る前に治療を始めた方が良い場合もあります。迷ったときは様子を見るのではなく、まずは動物病院へ連絡してください。

家でやってはいけないこと

中毒が疑われる場合は、自己判断で対応しないことが大切です。
特に注意が必要なのが、「無理に吐かせること」です。無理に吐かせることで、吐いたものが気管に入ってしまうこともあります。また、洗剤や漂白剤、石油系製品などは、吐かせることで食道や気管をさらに傷つけてしまうことがあります。また、「牛乳を飲ませれば大丈夫」と思われることがありますが、多くの場合は効果がなく、かえって治療が遅れてしまうこともあります。

中毒では、食べたものによって適切な治療が大きく異なります。自己判断で処置を行うのではなく、まずは動物病院へ相談し、獣医師の指示を受けて対応しましょう。

中毒の時の治療

中毒の治療は、「何を」「どれくらい」「いつ食べたのか」、そして現在の症状によって大きく変わります。そのため、動物病院ではまず飼い主さんから詳しくお話を伺い、その情報をもとに治療方針を決めます。

まずは全身の状態を確認し、必要に応じて血液検査やレントゲン検査、エコー検査などを行います。これらの検査により、中毒による肝臓や腎臓への影響や、誤飲したものが胃や腸に残っていないかなどを確認します。

食べてからあまり時間が経っていない場合には、薬を使って吐かせる「催吐処置」を行うことがあります。胃の中にあるうちに吐き出すことで、毒が体に吸収される量をできるだけ減らすことが目的です。

また、必要に応じて「活性炭」という薬を使うことがあります。活性炭は、胃や腸に残っている有害な成分を吸着し、体への吸収を抑える働きがあります。

活性炭(活性炭)

中毒の種類によっては点滴治療も重要です。点滴には、脱水を改善するだけでなく、尿量を増やして毒素の排出を促したり、腎臓への負担を軽減したりする役割があります。特に腎臓に影響を及ぼす中毒では、早期から点滴を行うことで重症化を防げる場合もあります。また、中毒によって貧血が起こる場合には、毒素の速やかな体外への排出を促すために入院して点滴治療を行うことがあります。さらに、貧血が重度の場合には、輸血が必要になることもあります。

さらに、震えやけいれんなどの神経症状がある場合には、それを抑える薬を使用します。また、症状が重い場合には、酸素管理や24時間の点滴管理が必要となるため、入院治療を行うこともあります。

残念ながら、中毒には「この薬を使えば必ず治る」という万能な治療法があるわけではありません。そのため、毒が体に吸収される前にできるだけ取り除き、全身状態を支えながら体から毒素が排出されるのを助けることが治療の基本となります。だからこそ、中毒では様子を見るのではなく、できるだけ早く治療を始めることが何より重要です。

中毒を防ぐために

中毒は、飼い主さんが少し気をつけることで防げるケースも多くあります。ワンちゃん・猫ちゃんにとって危険な物はワンちゃん・猫ちゃんの届く場所には置かないなど、「食べさせない環境づくり」が大切です。「うちの子は食べないから大丈夫」と思っていても、興味本位で口にしてしまうことがあります。特に子犬さん・子猫さんは好奇心旺盛なので注意が必要です。

中毒は、起きてから対処するより、「起こさないこと」が何より大切です。大切なワンちゃん・猫ちゃんを守るためにも、日頃から生活環境を見直し、危険なものを近づけないようにしましょう。

 

さくま動物医療センター
☎ 0964-28-6803